キウイ種の酵母解析と、現在進めている検証について
こんにちは。
フルーツ種の米粉パン講座を主宰しております、シンプリーキッチン®︎のむねおかまなみです。
最近、自家培養したキウイ種について
大学の研究室と連携して解析を行いました。
前回のブログはこちら
ただ、この話をすると、
「結局それってどういう意味ですか?」
「培地との分離ってなんですか?」
と聞かれることが多く、
特に一般の方にはかなり分かりにくい内容だと思います。
そこで今回は、
キウイ種の解析が何を意味するのか
そして現在行っている検証についてまとめてみます。
この記事は、
・パン職人の方
・発酵研究者
・グルテンフリー研究者
・レストラン
など、プロとして培地から分離したキウイ由来の酵母菌(以下、キウイ酵母と言います)の導入を検討されている方向けに書いています。

キウイ種を「培地」と「菌」に分離するとは?
まず今回行ったのは
自家培養キウイ種から酵母菌だけを分離すること
です。
通常、フルーツ種を起こすときは、
キウイの皮+水+砂糖
で培養します。
皮に付着した酵母菌は、
皮の内側の「実」の糖分やミネラルなど、そして添加する砂糖を餌にして増えます。
酵母菌の活動は、二酸化炭素を出すことだけでなく、活動の中で有機物、副産物を生み出します。
そのため、パンに影響しているのが
・キウイに付着している酵母菌の活動による有機物、副産物なのか
・皮の内側の「実」成分なのか
分からない状態です。
そこで今回、
大学の研究室で、自家培養したキウイ種から
酵母菌だけを分離・同定しました。
その結果、
Saccharomyces cerevisiae
(サッカロマイセス・セレビシエ)
が確認されました。
つまり
自家培養したキウイ種の発酵の主体となる酵母菌は
パン酵母と同じ種の酵母であることが確認できました。
※市販のイーストと同じサッカロマイセス・セレビシエですが、その中での菌株のジャンルがちょっと違います

キウイ種の特徴は「菌」なのか「キウイ」なのか
ここからが今回の研究の本題です。
米粉パンにおいて自家培養キウイ種を使うと
・米粉パンがふわっと軽くなる
・保湿性が高い
・比容積が伸びる
などの特徴があります。
ではこの特徴は
①キウイに付着している酵母菌の働きなのか
②キウイの「実」の成分が影響しているのか
これがはっきりしていませんでした。
そこで現在
酵母菌単体でのパン試作
を行っています。

※この自家培養キウイ種の米粉食パンは、最高に美味しい!
小麦パン・米粉パンでの検証
現在は
・小麦パン
・米粉パン
両方で検証を進めています。
さらに
・培養液
・発酵種
それぞれで試作しています。
検証していて感じるのは「菌を飼っている感覚」
今回の検証で一番面白いと感じたのは
酵母は「菌を飼っている感覚」に近い
ということです。
例えば
・どんな餌を好むのか
・どのタイミングで栄養を与えるのか
・温度による違い
これによって発酵の状態が大きく変わります。
酵母を増やすためには
糖だけではなく
・窒素源
・ミネラル
などの栄養源が必要です。
これは理論としては知っていましたが、
今回の検証でかなり体感として理解できました。

「菌の代謝物」の味を感じる
もう一つ面白いのは
パンの味です。
自家培養のフルーツ種では、どうしても
「フルーツの味」
なのか
「発酵の味」
なのか区別がつきませんでした。
しかし今回、酵母菌単体で培養すると
菌の代謝物の味
を感じることができます。
つまり、果物の味ではなく
発酵そのものの味
です。
温度・種継ぎによる変化
さらに
・温度
・種継ぎ
によって発酵の性質が変わることも感じています。
これは
・酵母の活性
・微生物バランス
・代謝物
などが関係している可能性があります。
小麦パンでは生地が緩くなる現象
小麦パンで試作すると
興味深い現象も起きています。
キウイは
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)
を多く含むため、自家培養キウイ種は、通常、小麦パンでは使えません。
しかし今回の酵母は
キウイから完全に分離されています。
つまり理論的には、キウイの酵素の影響は出ないはずです。
それにも関わらず
小麦生地が緩くなる
という現象が起きています。
これは
・酵母の代謝物なのか
・培養条件なのか
・別の要因なのか
・たまたま私だけに起きている現象なのか
まだはっきりしていません。


※小麦パンでの検証の様子
現在、様々なプロの方に使っていただいています
現在この、培地から分離をしたキウイ酵母は
・フレンチレストラン
・小麦パン職人
・グルテンフリー研究家
など、私以外の方にも試作していただいています。
(忙しい中、検証にご協力いただき感謝しております🙇ありがとうございます!)
それぞれの現場で
・どんなパンになるのか
・どんな特徴が出るのか
を検証している段階です。

※生米パンでの検証の様子
まとめ
今回の解析によって
キウイ種の酵母の主体が
Saccharomyces cerevisiae
であることが確認できました。
しかし、この酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)は、
・小麦パンにおいてどんな使い方ができるのか
・何回種継ぎできるのか(特性が維持できる範囲はどれくらいか)
・何度の温度帯だと、どんな有機物を生み出すのか
・冷凍耐性はあるか など、
特徴を捉えて、どんな使い方ができるのか?を検証しているところです。
今の所の個人的な感覚として、
お米の味を邪魔しない、旨みや甘みを際立てることができる酵母菌ではないか?
保湿性が高く、グルテンフリーパンに有効ではないか?
キウイ種は本来、小麦で使えない酵母菌なので、小麦パン屋さんの中で差別化できるのではないか?
と思っています。
また新しい結果が出たり、お店等で実際に活用が始まりましたら、ブログでも共有していきます。

